こんにちは、ニャン吉です。
ニジマスは外来種って本当かな?
あまり知られてはいませんが、ニジマスは外来種(外来生物)です。
結論として3つの外来種指定の内、生態系被害防止外来種、侵略的外来生物に指定されているだけであり、外来生物とは言えブラックバスのような規制または駆除対象ではありません。
この記事ではニジマスが外来種である歴史的な側面から、ニジマスが特定外来生物に指定されない理由まで解説していきます。
ニジマスの外来種指定について知りたい方は読んでみて下さい。
ニジマスが外来種である歴史
ニジマスは日本の魚ではない
ニジマスは元々日本にいた魚ではありません。
ニジマスはサケ科に属する魚で、その自然分布は北太平洋の寒帯から温帯にかけて広がっており、この魚は、カムチャツカ半島から始まり、北アメリカ大陸の西岸を南下してメキシコの北西部に至るまでの範囲に生息しています。
この広い地域には、アラスカ、カナダ、そしてアメリカ合衆国の西海岸、メキシコ北西部が含まれます。
いつから放流されたの?
日本におけるニジマスの歴史は、19世紀後半に始まります。
具体的には、1877年(明治10年)にアメリカ合衆国カリフォルニア州から関沢明清によって初めて移入されたことが、日本におけるニジマス導入の始まりとされています。
この移入は、後に日本各地の渓流や湧水地帯での養殖および放流活動に火をつけることになりました。
本州以南ではニジマスが自然状態での定着が難しいと考えられています。
ニジマスが外来種であるが定着しない
放流しても定着しないとされている理由
本州以南の河川でニジマスが定着しにくいとされる理由は、原生地である北アメリカの冷涼な水域に適応しており、本州以南のような比較的暖かい水温の河川では生存しにくい傾向があります。
- 放流後すぐに釣り上げられる: 本州以南では釣り人の活動が活発であり、放流されたニジマスは短期間で釣り上げられることが多いです。このため、個体群が安定して定着し、自然繁殖する機会が減少します。
- 梅雨時の増水による繁殖の困難: 梅雨時には河川の水位が大きく上昇し、流れが激しくなることがあります。ニジマスは流れの穏やかな場所で産卵するため、増水によって適切な産卵場所が失われると、繁殖が困難になります。これにより、自然状態での個体数の増加が抑制され、定着が難しくなるのです。
しかし、この事情は、同じ外来種であるブラックバスと比較して、ニジマスの導入に対して寛容的な自治体が多い一因です。
ブラックバスは適応力が高く、日本の多くの水域で定着し、在来種に影響を与えることが知られており、ブラックバスの導入に対する態度はより厳格であり、ニジマスに対する対応とは異なるものになっています。
ニジマスは外来種以外にも数多く種類が存在する
ニジマスの交雑種
ニジマスは外来種であることと、人工的に作られた交雑種、突然変異種も存在します。以下の種は人工的に作られたニジマスの一覧表です。
名称 | 交配内容 | 特記事項 |
---|---|---|
絹姫サーモン | ホウライマス♀とイワナ♂あるいはアマゴ♂の三倍体 | 愛知県水産試験場により作出。父系にアマゴ(ニジアマ)またはイワナ(ニジイワ)を持つ。主にニジアマが流通。 |
信州サーモン | ニジマス四倍体♀とブラウントラウト偽♂の三倍体 | 長野県水産試験場により作出。食用のみ使用可能で、釣り場への放流や県外流通は禁止。 |
ロックトラウト/ロックサーモン | ニジマス♀とアメマス偽♂の全雌三倍体 | 新潟県内水面水産試験場により作出。「魚沼美雪マス」は新潟県にじます組合の商標登録。 |
富士の介 | ニジマスとキングサーモンの交雑種 | 山梨県水産技術センターによる作出。地域ブランド化を行っている。 |
ヤシオマス | ニジマスの全雌三倍体 | 栃木県内で生産された個体。全雌三倍体はすべて雌である。 |
銀河サーモン | ニジマスの全雌三倍体 | 北海道上川郡上川町の養殖業者による生産。全雌三倍体。 |
笹川マス | ニジマスの全雌三倍体 | 新潟県村上市の養殖業者による生産。全雌三倍体。 |
アルプスサーモン | ニジマスの全雌三倍体 | 長野県飯田市の養殖業者による生産。全雌三倍体。 |
ニジマスの全雌三倍体とは、遺伝子のセットが通常の二倍体(2n)ではなく、三倍体(3n)であり、かつその個体が全て雌である状態を指します。
三倍体のニジマスは通常、不妊であるため、放流した場合に野生の在来種と交配して生態系を乱す心配が少ないとされており、成長により多くのエネルギーを割り当てることができ、より迅速な成長が可能です。
食用や管釣り場に利用されています。
ニジマスの突然変異種
名称 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|
アルビノニジマス | メラニン色素欠如、体色が黄色近似 | 観賞用、養殖場での標識魚として利用 |
ホウライマス | 斑紋の無い突然変異、遺伝的に優性 | 遺伝的研究、育種 |
コバルトマス/コバルトニジマス | 脳下垂体中葉の異常によるコバルトブルー体色変化 | 観賞用、大量生産は困難 |
ドナルドソン (大型ニジマス) | 1m以上に育つ、スチールヘッドとの交配育種 | 管理釣り場の人気種、食用 |
ギンヒカリ | 3年で成熟する系統を選抜育種 | 高品質な肉質を保持する食用 |
ハコスチ | スチールヘッド系と箱島系ニジマスの交配育種 | 遊漁用ニジマスとして利用 |
釣り堀では強力な引きや、大きいサイズを短期的に飼育するため様々な改良が各地でされています。
上記の種は突然変異種ではあるものの、品種として認定されている種であり、日本だけでなく世界中で食用として改良、生産がされています。
管釣り場での釣りは出来ますが自然界に放流することは禁止されています。
ニジマスが外来種指定されている理由
在来種への影響
- 在来種の産卵床を破壊
- 餌の競合
- 生態系への影響
- 生息域の侵略
ニジマスの産卵時期がこれらの在来種より遅いため、在来種(イワナやオショロコマ)の産卵床を破壊し、生息に悪影響を与える可能性が指摘されています。
またニジマスは在来種と同じ餌を競合することにより、在来種の餌の資源を奪うことがあります。これにより在来種の個体数減少につながることが懸念されています。
ニジマスは特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律において生態系被害防止外来種に指定されており、日本の渓流生態系への影響が特に問題視されています。
生息域の侵略に関しては放流されたニジマスは在来魚種の生息域を侵略し、在来種が確認できなくなるほどの影響を与えることがあり、例えば、北海道の支笏湖に放流されて以来、多くの水系に定着し、在来魚種への影響が確認されています。
ニジマスが指定されている外来種法案
規制対象の指定ではない
指定カテゴリ | 定める機関 | 内容 |
---|---|---|
特定外来生物 | 日本政府 (外来生物法) | 海外起源の被害を及ぼす外来生物を指定し、飼養・輸入等を規制。 |
生態系被害防止外来種 | 日本政府 (外来生物法) | 侵略性が高い外来種を幅広く選定。特定外来生物に指定されていないものも含む。 |
侵略的外来生物 | 国際自然保護連合(IUCN)/日本生態学会 | 生態系や人間活動に被害を及ぼす恐れのある外来種。 |
特定外来生物は、ブラックバス(オオクチバス/コクチバス)やブルーギルが代表的な魚です。ニジマスは外来生物ではあるものの、2つの外来種指定であり、規制対象ではありません。
罰則も存在せず指定することで、注意喚起をする意味合いしか持っていないという事です。
おそらくこれから外来生物とは言え、特定外来生物に指定されることはないと考えられます。
ニジマスは外来生物なのに扱いが違うのはなぜ?
ニジマスが許される訳
ブラックバスがダメでなぜニジマスは良いんだ?と、ここまで読んでいただいた方は疑問に思うかもしれません。
結論としてニジマスの方が食品価値、文化的価値、つまり経済的価値が高いからです。
確かにブラックバスの繁殖力と適応能力は高く、生態系への影響は懸念があります。しかし寒冷地にしか定着しないにせよ、ニジマスも生態系への影響はブラックバス同様です。
アメリカの様に日本も歴史的にブラックバスが食用、養殖、フィッシングと文化的、経済的価値が高ければ現在のような状況にはなっていなかったのかもしれません。
結局ブラックバスや琵琶湖の漁師は、政治的背景つまり環境省の利権獲得のために利用されただけだと20年たった現在感じます。
ニジマスしかり、アユ、ワカサギだって人の手によって移動された外来種なのですから。
人間と言うのは身勝手な生き物です。
ニジマスは在来種扱い?
上記以外にもニジマスが特定外来生物に指定されない理由として、外来生物被害防止法の記述によりますと。
本法律で定義される外来生物は、明治維新以降に導入された生物である。したがって、日本固有の生物種のほかに、導入歴が古い生物についても在来種として規定され、これらすべてが本法律の適用外となる。
明治維新の期間については諸説あり、はっきりとした定めはありません。
つまり筆者がニジマス愛好家であれば、明治維新の期間が学術的に決まらなければ、法的には無効、ニジマスは在来種であると主張するでしょう。
ニジマスが導入されたのは、1877年(明治10年)からとされており、約150年も前の話です。
ちょうど明治維新の最中であることも考えられるため、特定外来種に指定されることはないかもしれません。
ニジマスが特定外来生物に指定されるとどうなるのか?
2014年度の十勝毎日新聞によりますと、ニジマスの特定外来種指定反対の署名が2万5000人分が道に寄せられたとの記述がありました。
その中の意見として。
「100年前に導入されて市民権を得ている」
「指定は社会的、経済的損失が大」
「駆除は不可能」
在来種が深刻な影響を受けており、一刻も早く無制限の放流を制限すべき
「放流事業が禁止されれば大人だけでなく子供たちの楽しみまで減ってしまう」
指定されると(養殖)事業は難しい
ニジマスが指定されるとどうなるのか?と言う点はまずは経済的損失。
つまり水産養殖産業、食品加工、飲食店、旅館、釣り業界、観光産業とかなりのダメージを追ってしまうことになるでしょう。
養殖産業は北海道だけではなく、全国に影響がありそれに伴う産業の被害は甚大です。
反対意見が多くあるのも納得できますし、産業に携わる人は死活問題にもなりかねません。人間の経済活動と自然界とのバランスは政治的な側面もあり難しいものです。
ニジマスは外来種まとめ
ニジマスは外来種と言えど100年以上前から日本では文化として定着しており、外来種として毛嫌いされているわけではありません。
しかし各地域での放流は禁止されている地域もあり、ルールを守ってニジマス釣りを楽しんでください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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